ヅカローがHiGH&LOWの前日譚としてあまりに美しすぎた
私はいわゆる「ハイローから入ったLDHのfam」である。
ザム(HiGH&LOW THE MOVIE)が何だか凄いとTwitter上で話題になり、推し俳優が出ていたこともあり劇場まで足を運び、ズルズルとLDH、主にEXILE TRIBEにハマった、よくいるオタクの端くれだ。
そんな私はこの度、宝塚大劇場に初めて赴くこととなった。
ヅカロー……「HiGH&LOW THE PREQUEL」を鑑賞するためである。
あの宝塚歌劇団が、何故かハイローを舞台化し、しかも「コブラが無口」になったきっかけ――つまり本編の前日譚が今頃明らかになるというのだから驚きである。いろんな意味で驚いた。本当に。
宝塚歌劇団の舞台を鑑賞するのは、地方公演が地元で上演された折に数度という、ほぼほぼ初心者・演者に関しては全くの無知である。それがまさかハイローのために宝塚大劇場まで遠征することになろうとは夢にも思わない。なんでだ。
しかしもう、とにかくハイロー関係なら「とりあえず観る! 絶対に面白いから!」という確信をこの6年余りで得ていたので、不安要素は少なかった。
宝塚も、ベルサイユのばらばかりではない。ウエストサイド物語(というか山王連合会初見の感想がコレだった)なども演目にあるし、まあ、なんとかなるでしょ!「トゥナイト」を歌うコブラが脳裏を過る。うん、このビジュアルのコブラなら歌う。大丈夫! 不安要素はない!
コブラの恋人(?)の存在以外には――
かくして私は、宝塚大劇場の2階席に座っていた。
さすが専用劇場。格式高く、眺めも良好。いつかは行きたいと思っていた大劇場の1回目がハイローになるなんてなあ……と不思議な気持ちでいっぱいになっていた。
開演。わーすごい、宝塚大劇場だ。すごい。お客さんみんな拍手がプロ。
さっそく始まるのはSWORDの説明。例のやつ。
原作でいうところの立木文彦がちゃんといる。やっぱりこれがなきゃハイローじゃないね。
G-SWORDという初期にだけ存在した(わたしが忘れてただけ)名称もちゃんと登場する。うわ、え、再現度高い。なんだこれは。
なんだこれは……?!!?!!
以下、ヅカローのここがすごいポイントと感想を列挙していく。ネタバレもあります。
各チームのメインどころかサブキャラまでやたらと再現度が高い
大体SWORDの各チームはトップ1人に対してナンバー2が1人か2人いて、山王でいうところのコブラ・ヤマト、ラスカルズはロッキー・コウ、鬼邪高は村山・古屋・関……と並んでいくのだが、トップ5人はもちろん、ナンバー2の面々を筆頭に、チームメンバー全員の再現度がめちゃくちゃに高い。
2階席から双眼鏡無しで見て、原作を知っていれば、すぐに誰と分かる。カニ男!!!!カニ男じゃないか!!!!!!!!
苺美瑠狂もきちんといる。純子さん本人かと思った。
もちろんラスカルズのゴールデンボンバーもちゃんといて笑っちゃった。
劇中歌がちゃんとそのまま使われる
楽曲は宝塚完全オリジナルなのかと思いきや、開始早々流れるのはおなじみ「HIGHER GROUND」。
えっ まさか歌うんですか……歌ってる!!!
個人的に一番好きな「RUN THIS TOWN」も勿論、スモーキーが熱唱する。スモーキーが。おもろいポイントその1。
登場人物の所作の再現度
1つ目と重複する点もあるのだが、ここがまたすごい。
ルードはパルクールを彷彿とさせる、静かでアクロバティックな動き。鬼邪高は体当たり上等の、THE ジャパニーズ 不良ムーヴが素晴らしい。達磨一家の日向は怠惰で緩慢な所作だが、得体のしれない風格を背負っている。
どこを取っても隙がなく、まったくもってハイアンドローの世界の登場人物が舞台上で動き回っているのだ。こんなエキサイティングな体験ある?!
THE タカラヅカ的要素とHiGH&LOW世界の融合
山王がメインとなるとどうにもキラキラに欠けるのが難である。
そこを思い切り宝塚の方角に振り切るのがロッキーとホワイトラスカルズの存在。
SWORDの中で一番キラキラしているのは、ホワイトラスカルズだろう。ロッキーの歯はピカピカだし、クラブ経営してるし。白いし。清潔感が一番あるし。(時計じかけのオレンジだけど)
「仮面舞踏会」という、なんじゃそりゃ!な要素も、ラスカルズ主催となればアレ、違和感がないぞ……?!と気が付くとタカラヅカの世界に入ってしまう。宝塚ファンのフォロワーに心配されましたが、全然親和性ありました。
山王の次点にラスカルズ・そしてリーダーがもともと独自に儚く耽美な世界観を構築していた「ルードボーイズ」を持ってくることで、水と油が混ざり合って見事に乳化する。素晴らしい。
そういえば時系列的にDTC設立前なのでヤマトとダンとテッツが3馬鹿(?)ポジションになっていて面白かった。
白い衣装を着て仮面で顔を隠し、舞踏会に乗り込むヤマトとダンとテッツ……DTCではないけど、DTCにありそう……いや、観たような気がしてきたなあ……
ここ!!!!!!!!
ここが一番感動したポイントであり、宝塚の脚本の凄さを体感した。
本編中のコブラはMUGEN時代を除き、得てして「多くを語らない」リーダーである。
ドラマ版で描かれた幼少期・MUGEN時代や、ザムでの琥珀に対する態度を見るに、根っからのクールタイプというわけではなく、ちゃんとヤンチャができ、熱く、気さくな一面もあることが伺い知れる。
それが「多くを語らない」男になったのは、龍也を亡くし、琥珀と九十九も失った山王商店街と、今ムショに(こういう歌詞の曲が最初にあってめちゃくちゃ面白い ノボルは 今ムショに~♪)いるノボルが帰ってくる場所を作って待っているという重責を背負ったことからだと思っていたのだが、どうも違うというのがヅカローの要であり、妙である。
本編を見ていると、コブラはモテこそすれ恋愛などまるで興味なし(ハイローの登場人物は大体そうだが)という人間で、そこが私の抱いた唯一にして強大な不安要素――「コブラ」と「恋愛」は結びつくのか――であった。
しかも突然のオリジナルキャラクター「カナ」がその対象。そりゃ宝塚ですからね。恋愛は不可欠ですよ。でもだからってコブラに恋愛なんて……と思っていた自分を殴ってやりたい。
まるで「ローマの休日」を見ているかのような、ふたりの楽しげな交流。
無邪気で愛らしいカナの存在だけで、コブラが美しく儚い空気感に溶け込んでいく。
コブラにコブラツイストを掛けたことから一目置かれたとかいう設定が吹き飛んで、この瞬間が永遠に続けばいいのに……そう……MUGEN……と、私はコブラとカナに夢中だった。
一番素晴らしく感動し感激したのはふたりのキスシーンである。
カナの生前、何度もふたりは良い感じになるのだが、決して一線を越えることはない。キスしようとして額を合わせたシーンが劇中で一番好きです……。
それが最後、コブラが見た願望・幻想なのか、何なのか……ふたりが唇を重ねるのは、山王商店街のアーケードの上――カナの死後なのである。
ああ、コブラ……哀しきコブラ……カナ……我が人生に咲き誇りし最大の花よ……
ここに「コブラ」と「恋愛」の正解を見た。素晴らしい。なるほどこれは宝塚でしか描けまい。もう何も言えない。
少し泥臭く、ときに殴り合い、SWORD地区に生き、しかしカナというひとりの女性に秘めた想いをほんのひととき寄せたコブラの「うたかたの恋」。
ロマンチックでいてロマンチックすぎない、泥臭くいて泥臭すぎない。
とんでもない化学反応の場に立ち会い、私は脱帽し、しばらく何も考えられなかった。
ヅカロー。ありがとう、ヅカロー。ありがとう、LDH。
できれば次作を待ち望み、できれば雨宮兄弟が……出て欲しいです……
あと、泊まりだったので翌日大劇場に再度訪問し、ロッキー(芹香斗亜様)のブロマイドの全部セットを購入しました。本当はスモーキーも欲しかったけど完売でした!完。